『幼女戦記』第5巻の表紙
引用:東條チカ(著)『幼女戦記』第5巻 表紙 KADOKAWA 2017年5月発行

幼女戦記』(AA)のコミカライズ第5巻が発売されました。今回は3ヶ月連続刊行の第2弾ということで、ダキア大公国との闘いが収録されております(アニメでは第5話)。以下で簡単にレビューしたいと思います。

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東條チカ(著)『幼女戦記』 第5巻

コミックス第5巻では第12「ダキア戦役 Ⅰ」と13章「ダキア戦役 Ⅱ」、および第14章「ノルデン Ⅰ」が収録されております。

不本意ながらも即応魔導大隊の隊長を命じられたターニャ。単なる前線送り以上に死の危険が付きまとうこの命令に、せめて自分の盾になるような部下を作ろうと候補生たちに過酷な訓練を課した顛末が第4巻でのお話しでした。

現代の特殊部隊などで用いられる訓練は未来を知るターニャらしいものでしたが、その結果この時代の軍人としては突出した兵士を短期間で作り上げることに成功。かくして二〇三航空魔導大隊が誕生したのでした。

そして魔導大隊のお披露目の最中、ダキア大公国が帝国に突じょ宣戦布告。編制早々、二〇三航空魔導大隊は前線に赴くことになるのが今回のお話しです。

表紙は凛々しい表情のターニャ。大きく描かれた演算宝珠がかっこいいです。

幼女戦記 第5巻の表紙・演算宝珠とターニャデグレチャフ
引用:同上

周辺国事情

帝国に圧倒的に劣るハズのダキアがなぜ突然攻めてきたのか。この辺りの説明はアニメでも若干触れていましたが、マンガではよりわかりやすくなっております。

幼女戦記 北方ノルデンと西方ライン戦線の解説と説明
引用:同書 6ページ

元々、いち早く工業化に成功し先鋭的な兵器群を有していた帝国は、周辺国から見れば非常な脅威でした。そこへレガドニア協商連合が政治的デモンストレーションという愚行により帝国と開戦、これは西のフランソワ共和国の参戦を呼び込むこととなり、帝国は北方ノルデンと西方ラインで、協商連合と共和国相手の二正面作戦を強いられることになります。

戦線を2つも抱えた帝国は国力を急速に疲弊させることになりますが、これが平時では帝国に相手にしてもらえないダキアのような小国の目にはチャンスと映ったようです。
協商連合と共和国から挟み撃ちにされている帝国を脇から突けば簡単に崩れるだろうと考えたダキア大公国は先鋒部隊として三個師団を帝国領へ投入。侵攻してきたというわけです。

ダキアの宣戦布告は、疲弊していた帝国軍には大きな問題として見られたでしょうし、協商連合などすでに帝国と交戦している国からすれば自国の負担が軽くなるのではと期待させたことでしょう。事実、ダキアの物量を帝国軍は脅威と考え、国境警備隊を下がらせて防衛線構築を急ぎます。

ターニャ達二〇三航空魔導大隊に下された命令は、撤退する国境警備隊の支援と侵攻してくるダキア大公国軍の足止め、つまり遅滞戦闘でした。
三個師団相手にたったの一個大隊で相手をするのはあまりに無茶だと帝国の誰しもが考えいました。ただ一人、ターニャ・デグレチャフという悪魔以外は・・・。

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60万 対 7万

司令部からの命令で、ダキアへの遅滞戦闘へ出撃する二〇三航空魔導大隊。ダキア軍60万に対して7万の帝国は当しょ難戦を想定していました。

その最前線へと向かうターニャ達。これがターニャの大隊にとって初陣となりますが、友軍からは祖国のために死地へと向かう英雄と捉えられたようです。状況だけみればその通りでしょう。

銀翼突撃章「白銀」ターニャ・デグレチャフ少佐
引用:同書 67ページ

しかし、周りの懸念とは裏腹に余裕のターニャ。実は、レルゲン中佐の助言に従い、事前にダキア大公国を調べていたのでした。

それによれば、物量では優位なダキア大公国軍の実態は前近代的な兵農混成軍であり、ろくに訓練も受けていない烏合の衆だったのです。もちろん航空戦力などなく対空武装すらありません。
これが初の世界大戦となるこの時代では航空戦力の脅威があまり認知されておらず、ダキアのような小国はあまり力を入れていなかったのでしょう。

対してターニャ率いる魔導大隊は近代的なドクトリンによる戦術と訓練を受けた精鋭でありますから、制空権のない相手に航空戦力が襲いかかることがどういう結果になるのかをよく知るターニャがはしゃいでしまうのも無理はありません。

実際、ダキアを相手にした戦いはまさにワンサイドゲームとなり、ターニャたち大隊は全く被害を受けることなく一方的にダキアを蹂躙していきます。
こうなるともはや戦争ではなくただの実弾演習であり、ターニャも大隊の訓練の仕上げという感覚で次々と敵を撃破していきます。

しかし、順調なダキア戦でしたが問題がなかったわけではなく、例えば次席指揮官のヴァイス中尉は古い常識から自分たちの圧倒的優位な立場を理解しきれておらずターニャから厳しい叱責を受けたりします。
そんな時は自らが最前線で手本をみせるターニャ。その姿を見て部下たちはますますターニャへ信頼を置くようになったようです。

そうした小さい問題はありましたが、戦闘自体はターニャ達が終始圧倒していき、敵の侵略軍司令部まで到達。若干煽り気味の降伏勧告を行い、一気にこれを叩き潰してしまいます。

相手をあおりまくる降伏勧告をするターニャ・デグレチャフ
引用:同書 79ページ

そして、残敵掃討は増援部隊に任せ、ターニャたちはダキアの首都を目指します。
目標は敵の兵器工廠の破壊。ここでアニメでも話題になったターニャの幼女ボイスによる避難勧告シーンが登場します。

幼女ボイスで避難勧告をするターニャフォンデグレチャフ少佐
引用:同書 98ページ

ちなみにこのシーンは、アニメのターニャ役のオーディションでのセリフにあったそうです(巻末にある悠木碧さんのインタビュー記事に載っておりました)。

戦時国際法に則ったこの勧告はターニャの狙い通り敵の油断を誘いましたが、部下たちの評は”気持ち悪い何かを目の当たりにした”というヒドいものだったようです。
アニメで見た時もギャップが激しくて、つい笑ってしまったのを思い出しました。

最後は、超長距離狙撃術式で兵器工廠を完全に破壊。これでダキアは、戦闘を継続するのが非常に難しくなったことでしょう。
こうして二〇三魔導大隊の初陣は大勝利に終わり、ターニャのキャリアにまた一つ華々しい戦績が刻まれたのでした。

祖国よ!汝を滅ぼすものか!!

さて、ダキアを一方的に蹂躙した帝国は、次に協商連合と共和国を相手に展開している2つの戦線を解消しようとします。
参謀本部のゼートゥーアとルーデルドルフは先に脆い協商連合を叩くことに決め、オースフィヨルドにある鉄道網を抑えるべく、ターニャ率いる二〇三航空魔導大隊に奇襲作戦を命じます。

一方、協商連合側にはアンソン・スー大佐が登場。帝国との戦いで疲弊していく祖国を守るため、死を覚悟していました。

アンソン・スー大佐の静かなる決意
引用:同書 134ページ

ここでのアンソンのセリフ”祖国よ、汝を死なせるものか”は、アニメで聞いた時も非常に印象深いセリフでした。
上層部の無謀な決断により始まった戦争ですが、それでも国のため・家族のために命を賭ける決意をするアンソンの姿は見ていて思わず応援したくなります。
彼の結末はおそらく変わらないでしょうが、ターニャとの闘いがどのように展開していくのか期待しています。

息のピッタリな?レルゲンとターニャ

さて、今回も相変わらずレルゲン中佐とターニャの掛け合いは笑わせてくれます。
思っていることはまったく違うのに毎回妙に息の合う二人のやりとりは、シリアスなシーンの多い本編の貴重な息抜きになっています。

満面の笑みでレルゲン中佐に敬礼するターニャ
引用:同書 123ページ
最前線を望んでいると勘違いするレルゲン
引用:同書 149ページ

ところで、勘違いとはいえターニャはレルゲン中佐をだいぶ信頼しているように見えますけど、これが実はターニャの勘違いであるということがわかる日はくるんでしょうか?

感想

アニメではBパートだけで終わってしまったダキア戦役をたっぷり描いた第5巻。アニメでは削られている各登場人物の描写があって相変わらず面白かったです。

また、前巻でもそうでしたが戦術や時代背景などが適時イラスト入りで入るので物語を違和感なく楽しめる構成となっており、小説やアニメのコミカライズとしては理想的な形だと思います。

そして、ラストではアニメでラスボス的な位置づけだったアンソン・スー大佐が登場。アニメ版よりも若く見えますね。
彼とターニャとの闘いは6巻で描かれると思われますが、原作小説とは違う展開をしたアニメをなぞるのか、それとも原作通りになるのか、今から来月発売される6巻が楽しみです。