『BTOOOM!』第26巻 完結編その2 『Dark 真実編』の感想

BTOOOMの最終巻26巻の表紙。ヒミコバージョン

引用:井上淳哉(著)『BTOOOM!』 第26巻 『Dark 真実編』表紙 新潮社 2018年8月発行

『BTOOOM!』の最終巻26巻のレビュー記事です。最終巻である第26巻は『Light 友情編』と『Dark 真実編』に分かれておりますが、こちらでは『Dark 真実編』を紹介したいと思います。

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井上淳哉(著)『BTOOOM!』 第26巻 Dark 真実編

ついに完結した『BTOOOM!』ですが、最終26巻はゲームのマルチエンディングをマンガで再現したかのような2冊刊行となっており、それぞれの展開・エンディングが異なっております。

作者の井上淳哉先生によれば、『Light 友情編』は読者のニーズに応えたハッピーエンド、この記事で紹介する『Dark 真実編』は作者の描きたかったことを出した真の解決を示したものだそうです。刊行にあたってこちらの『Dark 真実編』はほぼ1冊分描き下ろされたようです。

『Light 友情編』は以下の記事で紹介しております。

『BTOOOM!』の最終巻26巻の『Light 友情編』のレビュー記事。作者によれば、こちらが読者のニーズに応えたエンディングとのこと。

2冊の展開は序盤こそ似ておりますが、中盤~終盤、そしてエンディングはまったく異なっておりますので、ファンであれば2冊とも購入してまず損はないと思います。是非手に取ってみてください。

『Dark 真実編』では第118~121話までを収録。ですが、は300ページ近くと過去最大のボリュームとなっておりますので非常に分厚いです。

表紙はヒミコ。これまでの漫画的な美少女からちょっと実写に寄ったようなイラストになっております。

引用:同上

初回特典ではポストカードが付属。2冊とも付属しているポストカードを合体させると輝夜とヒミコのポストカードになります。

『BTOOOM!』第26巻『Light』編と『Dark』編の初回特典ポストカード ヒミコと輝夜のセクシーポストカード

『BTOOOM!』第26巻『Light』編と『Dark』編の初回特典ポストカード

中表紙はシュヴァーリッツ財団の面々。こうしたイラストになるのはこれが初でしょうか?

引用:同書 中表紙

織田と勝負する

『Dark 真実編』では最後の敵・織田と戦うことを選択します。

盲目の母親をこれ以上一人にしておけないと焦る織田は、ゲームに勝利して賞金と自由を獲得し早く元の生活に戻ることを考えます。

織田が一度決めたことを覆す男ではないことを知る竜太は、躊躇していては自分もみんなも殺されると考え、彼との決着を着けることを決意。人質となった輝夜と上杉の救出を吉良とヒミコに託し、一人で織田のところへ向かいます。

互いの意見をぶつけ合う両者。そしてゲームは再開されることに・・・

織田と直接対決を決意する竜太

引用:同書 45ページ

ここのシーン、『Light 友情編』では織田を説得しようとしていた竜太ですが、こちらではすでに戦う覚悟をしており迷いがありません。むしろ織田のほうが竜太を引き込もうとしていたのが印象的でしたが、彼の案だと竜太とヒミコ以外は全員殺すわけですから、竜太が飲めるハズもありません。

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吉良の救い

ゲームが再開されたことで、ひとまず米軍のドローン部隊は上空のオスプレイに帰還。ペリエたち特殊部隊が手を出さなければ、このままゲームを静観することになります。ペリエの護衛である特殊部隊の面々も、ドローン相手は一筋縄ではいきませんから転機を待つしか無いと待機することに。

ペリエは思うところがあるのか、近くで事態の推移を見守りたいと言い、上杉や輝夜を助けに向かった吉良たちに合流します。ペリエが単独行動したことで、特殊部隊のドミトリー隊長以下も彼を追うことに。結局彼を守るという名目で戦闘になってもやむなしと覚悟を決めたようです。

一方、上杉たちを見つけた吉良でしたが、周りに織田が仕掛けたリモコン式BIMに気がつきます。竜太と戦いながらも織田は人質の上杉たちを監視しており、吉良たちが近づいたら一気に爆殺するつもりでした。

しかし、罠に気づきながらも吉良はとっさの判断でBIMを回避、さらに上杉・輝夜の救出に成功します。

これには見ていたペリエも神がかり的な何かを感じた様子でしたが、吉良のゲーマー的な勘も冴えていたために全員無事という結果になったようです。
一歩間違えれば自分の命を落としてもおかしくないこの行動、吉良はこれまで人を殺してばかりでしたが、ここへきてようやく大事だと思える人間を守ることができ、涙を流しながら今は亡き東郷に思いを馳せるのでした。

大事な人を守れたことに安堵する吉良

引用:同書 69ページ

脱出への希望

吉良が上杉たちを助けたことでペリエは島の脱出のための最後のルート・旧日本軍が残した山の地下壕ルートへ吉良たちと向かいます。地下壕からは隠し港がある海のドックへと続く道があり、そこへペリエたちが乗ってきた潜水艦を呼び寄せ脱出しようというのです。

この狙いに気づいた財団側は、ペリエのゲーム介入によりただちにドローン部隊を再投入、ペリエや特殊部隊を抹殺するために動きます。再開されたドローンの猛攻で地下壕の入り口に着く前にピンチに陥りますが、吉良と上杉が輝夜をかばい、襲いかかるドローンをヒミコのフェイントを混ぜた攻撃とスナイパーのユリアの活躍で退けることで無事回避します。

いつ死んでもおかしくない状況ですが、先ほどペリエが感じたような超常的な何かで守られている印象を吉良と上杉も感じているようで、吉良はこれはきっと輝夜の力によるものだと言います。

絶望的な状況でも希望を持つ吉良と上杉

引用:同書 107ページ

ふだんオカルトは信じない上杉ですがこれには彼も同意しており、不思議に思いつつもうまく島を脱出できるのではと希望を持ちます。この絶望的な状況でもあきらめないで前へ進むことができるのは輝夜の力もあるでしょうが、吉良と上杉のみんなを守りたいという気持ちもあるでしょうね。

竜太 vs 織田

地下壕入り口にたどり着いたペリエたち。さっそく中へ入りますが、そこへドローンからのナパーム攻撃を受け、ペリエや吉良たちと特殊部隊は分断されてしまいます。

しかたなく地下壕を進むペリエたちでしたが、そこへ地下壕の存在に気づいた織田の攻撃を受けるハメに。おまけに前へ進むと今度はドローン部隊が待ち伏せしており、織田とドローンの挟み撃ちにあってしまいます。

しかし、ここでようやく竜太が到着。織田とBIMを使わない殴り合いのタイマン勝負となります。

BTOOOMではなく喧嘩で決着をつけようとする織田

引用:同書 145ページ

皆を守りたいと必死に戦う竜太でしたが、BTOOOMでは神がかり的な戦いをしていた竜太も素手ではケンカ慣れした織田には叶わず、あっという間に叩きのめされてしまいます。

そして、これが最後ということで、竜太への想いを語り出す織田。彼は竜太と同級生だった小学生時代は体が弱く、クラスの人気者だった竜太とは対照的でした。

そんな彼に優しくしてくれた女子がいたのですが、友達だと想っていた彼女の狙いは織田から竜太へラブレターを渡して貰いたかっただけ。友達だと想っていたのは自分の勘違いで、本当は見下されていたとわかった織田は自分の弱さを悔いて、それから自分を鍛え直し力を手に入れるために何でもやってきたようです。

そして高校時代、竜太へ近づいたのは彼にどれだけ追いつけたのかを知りたかったから。だから竜太の好きな女性がわかると、それに手を出すようなマネをしたようです。

ようは竜太に対して一方的なコンプレックスを持っていたということ。ずいぶん小さい事というか無理矢理な印象を受けます。織田の回想は『Light 友情編』でも語られますがそちらでは理由が異なっており、竜太が絡んでいますのでコンプレックスを持つにしても説得力があった気がします。

いずれにしても、これが織田が竜太にこだわり憎む理由ということでした。

非情な決着

身勝手な理由で振り回されたと知り、激昂する竜太。反撃しますが、そこへ吉良のBIMによる援護も入り態勢を立て直します。

が、乱入してきた吉良に怒った織田は、狙いを吉良とヒミコに変えてリモコン式BIMを投げてきます。後ろへ逃げようとした吉良たちですが、そこは運悪く行き止まり。まさに絶体絶命。

そこへ竜太が吉良たちの前に立ちふさがり、同じくリモコン式BIMを投げます。すると織田と竜太のBIMは空中でぶつかり、互いの目の前に落ちます。

互いのBIMが跳ね返って落ちる

引用:同書 176ページ

織田はスイッチを押せばそれで竜太たちに勝てますが、そこにドミトリー隊長たち特殊部隊がやってきて織田をけん制、身動きが取れなくなってしまいます。

一方の竜太ですが、自分がBIMのスイッチを入れればどんなに一瞬でも織田もスイッチを入れるだろうし、そうなれば自分は守れても逃げ場のないヒミコたちは死んでしまいます。動くに動けない竜太でしたが、織田がこのままじっとしているはずもないことは百も承知。

ギリギリのところで必死に考えても全員が無事に助かる方法がない、と結論を出した竜太が次にとった行動は・・・。

引用:同書 202ページ

織田のBIMからヒミコたちを守るため、自ら犠牲になる竜太

引用:同書 204ページ

自分のBIMのスイッチを入れて織田を倒し、織田のBIMは自分のバリヤー式で覆うことでヒミコたちに被害が及ばないようにすることでした。

つまり人を守るために自分の命を賭けること。これはゲーム版「BTOOOM!」で竜太がいつもやっていたことであり、彼の信念にもなっていた行動だったようです。

織田と相打ちになって死亡する竜太

引用:同書 205ページ

これにより織田と竜太は相打ちとなり死亡。ここまできて、まさかの主人公死亡という決着になってしまいました。

これは非常に意外でしたが、竜太のこの行動により、その後のヒミコ、ひいては世界の情勢まで変わってくることになります。

なお、竜太の死のあと、黒ベタページが8ページ続きますが、これは作者の意図した演出で落丁ではないとのことです。

敗北と意外な真相

竜太が死亡するとこれまでずっと気を失っていた瀕死の輝夜が目を覚ましますが、直後に彼女も死亡してしまいます。どうやら最後の力で竜太を守ろうとしていたようですがそれが叶わず、彼女も力尽きてしまったようです。

これによりゲームクリアに必要な3人のプレイヤー(ヒミコ・吉良・上杉)の生き残りが決定し、ゲームは終了してしまいます。ゲームを放棄して島から脱出するのが目的だったヒミコたちは事実上、敗北してしまいました。

ちなみに、ここでヒミコの苗字が御子神であると明かされましたが、作中ではこれが初でしょうか?(名前がへミリアであることは以前出ていましたが)

ともかくゲームが終わってしまったため、もはやペリエがヒミコたちと一緒に行動する理由はなくなっってしまったため、失意の3人を置いて彼らは乗ってきた潜水艦で島を脱出します。

ペリエは元々ゲームを止めて竜太たちを島から脱出するために来ていましたから、ゲームが終わってしまってはもうヒミコたちを連れだしても何も意味がないと思ったのでしょう。それはヒミコたちもわかっていましたが、最後に自分たちがこんな島へ連れてこられて殺し合いをさせたのが、世界を牛耳る巨大な権力者(シュヴァーリッツ財団)であることをペリエから教えてもらい、彼と別れました。

このあとヒミコたちは財団に回収され、そのまま優勝賞金の受け取りのため、シュヴァーリッツ卿がいるティラノスジャパン本社まで連れて行かれたのですが、ここでシュヴァーリッツ卿がどうしてもヒミコと二人だけで話しがしたいと言い出し、ヒミコは彼と対峙することになります。

シュヴァーリッツ卿と対峙するヒミコ

引用:同書 242~243ページ

そこでシュヴァーリッツ卿が言い出したのは驚くべきことで、どうやらヒミコは彼の娘(世界中にいる妾の一人の子)だったらしく、この殺し合いゲームを勝ち抜いた彼女を財団へ引き込もうというのです。

確かにヒミコの母親は外国人でしたが、まさかシュヴァーリッツの関係者だとは驚きでした。それっぽい伏線もなかったですし、そもそもヒミコの母親は作中に登場したことがなかったハズなのでこれはまったく予想できませんでしたね。

人のために命をかけて

この殺し合いをさせた元凶が自分の父親だと知って動揺するヒミコ。しかし、竜太を失った彼女は気丈にも対峙し、人の命を何とも思っていない彼を怪物呼ばわりします。

そんなヒミコの言葉など意に介さないシュヴァーリッツ卿。なおも自分を財団に引き込もうとする彼に、ヒミコは最後の手段として隠し持っていた烈火ガス式BIMを取り出します。どうやら外殻を外すことでボディーチェックをすり抜けたようです。

そして、竜太がしたのと同じように、人のために命を賭けてシュヴァーリッツ卿を道連れにしようとするヒミコ。

引用:同書 260ページ

しかし、シュヴァーリッツ卿の護衛から銃撃を受けBIMの起動に失敗、彼女は重傷を負って階下へと転落してしまいます。これを下にいた吉良と上杉が受け止めて一命をとりとめるますが、その直後、なぜか時間差でBIMが起爆し、シュヴァーリッツ卿もろとも烈火ガスが辺りに撒き散らされます。

これによりシュヴァーリッツ卿は死亡。ついでに参謀っぽいおばちゃんも死にました。世界最大の権力者がまさかこんなところで死ぬとは。

世界最大の権力者・シュヴァーリッツ卿の死亡

引用:同書 276ページ

シュヴァーリッツ財団は巨大な組織ですが、トップが死んだことで影響力を失い衰退していくことになります。ヒミコのこの行動により、世界が平和に向かうことになりました。

前へと進む

銃撃を受け重傷を負ったヒミコは病院に連れていかれますが、辛うじて一命はとりとめたようです。しかし、竜太が死んでしまった今、なぜあの銃撃で自分も死ねなかったのかを悔いるようになってしまいます。

そして退院の日、彼女に会いに来たのは意外にもペリエでした。
シュヴァーリッツ卿を倒したのがヒミコたちであると知った彼は、自分たちと一緒に世界を立て直さないかとヒミコを誘いに来たのです。吉良と上杉はすでに了解しているようで、ペリエたちと同行しています。

竜太が命を賭けてまで貫いた信念を継ぐことこそが彼に報いることであり、狂った世界を正してほしいというのが島で死んでいった人々の願いでもあるのではと考え、ヒミコはペリエたちについて行くことを決心します。こうして新たな生きる意味を得て、ヒミコは前へと進むのでした。

竜太を失いながらも世界のため前へ進むヒミコ

引用:同書 296ページ

感想

以上、『Dark 真実編』のレビューでした。

作者の井上先生によれば、こちらは作者の描きたかった結末ということでしが(読者のニーズ的には『Light 友情編』とのこと)、まさか主人公の竜太が死んでしまうとは衝撃というかショックでした。

しかし、これが無意味な死ではなく、この竜太の信念の行動が後のヒミコに繋がり、それがシュヴァーリッツ卿を倒すことにも繋がっていくわけですから、間接的に竜太が世界を良い方向へ導いたといってもいいかもしれません。主人公が直接世界を救うのではなく、その志を継いだ仲間がそれを成すという展開が面白かったです。

仲間といえば上杉ですが、今回も彼は輝夜を救うために必死に行動していました。結果は残念なものでしたが、輝夜を救おうと奮闘する彼の姿からは、初期のズル賢いイメージはまったく無くなっていましたね。

最初は絶対すぐ死ぬと思っていたのですが、終盤の活躍を見ていたら最後まで生き残るのも納得です。上杉もまたヒミコと同じく自分以外の者のために命を賭けましたから、ペリエや吉良、ヒミコたちと一緒に行くのも違和感が無くて良かったです。

ヒミコも竜太が死んで自棄になるのではなく、竜太の遺志を継ぐ形で新しい一歩を踏み出していくという希望のある終わり方でしたから一ファンとしては救われた思いです。
わかりやすいハッピーエンドは『Light 友情編』で描かれていますから、それとはひと味もふた味も違うストーリー展開を見せた『Dark 真実編』には満足です。

エピローグでは最後の最後に鷹嘴が登場していましたが、何やらまだ企んでいる様子。財団は衰退しましたが世界の権力者がいなくなったわけではありませんから、彼の野望もまだおわってはいないようです。この辺りはコミックスで確認して見てください。

『Dark 真実編』と『Light 友情編』についてですが、業界的にも珍しいマルチエンディングを再現した2冊を同時刊行するのは大変だったと思います。それでも作者の描きたかった結末と読者のニーズは必ずしも一致しませんから、それがわかっているのであれば、こうしたやり方も十分アリだと感じました。他の作品でも広がってくれると良いですね。

とにかく井上淳哉先生、長い間連載お疲れ様でした。