『かぐや様は告らせたい』第9巻 過去を振り切って前へと進む裏主人公・石上の物語

『かぐや様は告らせたい』 第9巻 表紙

引用:赤坂アカ(著)『かぐや様は告らせたい』 第9巻 表紙 集英社 2018年4月発行

赤坂アカ『かぐや様は告らせたい』の最新コミックス第9巻の感想記事です。石上の過去や今後の展開を想像させる体育祭がまるまる1巻に収録されております。

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赤坂アカ(著)『かぐや様は告らせたい』 第9巻

コミックス累計210万部突破したらしい『かぐや様は告らせたい』 。前回の時点で200万部突破目前でしたから、順調に部数を伸ばしているようです。

前回の記事は以下を参照してください。

正義感あふれる新キャラ・伊井野ミコがレギュラーキャラ化。精神崩壊しないか心配です。

9巻では裏主人公としてこれまで断片的に語られてきた会計の石上優の、過去と成長が描かれる体育祭編が完全収録されております。そのためか、いつもよりコミックスも30ページほど増えております。

第8巻では第81~91話までを収録。表紙は主人公と裏主人公コンビの白銀と石上。

『かぐや様は告らせたい』 第9巻 表紙

引用:同上

なんだかんだ生徒会では二人しかいない男性コンビですので仲良いですよね。

石上の決意

体育祭の準備が本格的に始まった秀知院学園。陰キャを自認する生徒会会計の石上はこれまで真面目にこうしたイベントに取り組んでいる人を、楽しそうと思いながらもヒガミからか腹を立てていたようです。

しかし、今回は(過去を吹っ切るつもりで)自分を変えていこうと思い立ち、体育祭の応援団に立候補を決意。彼がリア充と呼ぶ存在に、自らもなろうとします。

が、それは予想以上に困難だったようで、最初の応援団会議に参加した時点で、自分とはあまりにも違うテンションにまったくついて行けません。

リア充の応援団に入ってしまった石上

引用:同書 26ページ

リア充用語が飛び交う中、応援団に立候補したことを後悔する石上。“応援団に入ればリア充になれる”のではなく、“リア充が応援団に入る”ということに今更気づきます。ちょっと目標設定が高すぎたようです。

しかし、彼らリア充は何にでも積極的なのか、応援団の団長やスローガンなどはみんなの意見(石上を除く)でスラスラと決まっていってしまいます。さすがリア充だけあってコミュニケーション能力は人一倍あるようです。
石上に対しても副団長という女性(子安つばめというらしい)が積極的に話しかけてくれ、かろうじて連絡先の交換は確保できて一安心。

と思ったら、応援団の制服は男女入れ替えとなることが決定し、制服は各自で調達するようにとのこと。ただでさえコミュ障の石上にこれはハードルが高すぎます。

やっぱりリア充を目指すのは無謀かと思った石上でしたが、制服はなんとかぐやが貸してくれることに。以前、石上にテスト勉強を教えてくれたりと、かぐや様けっこう石上に優しいですよね。

これにより辞退仕様と思っていた応援団をもう少し続けてみることにした石上。

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白銀家の事情

今回明らかになるのは石上の過去と、もう一つありました。それは白銀御行会長のお家事情です。

白銀家は会長である御行と、たびたび登場している妹の圭、そして職業不定の父の三人暮らしでした。母親は生きてはいるようですが出奔しており、夫婦仲は離婚寸前のようです。

白銀の妹である圭はこれまでもたびたび登場しておりますが、礼儀正しく可愛らしいのは外面だけで、実際には兄を罵倒したり無視したりする反抗期の女の子でした(以前チラッと描写されていましたが)。

白銀圭は反抗期

引用:同書 46ページ

しかしこれは過保護な白銀と、プライドが高い妹が素直になれないからのすれ違いのようで、実際には本当に兄が嫌いなわけではないとのこと。思春期の兄妹では珍しくもない光景でしょうね。

逆に不安なのが父親。以前かぐやが白銀に電話をかけたときに、間違って出た人ですね。

白銀の父

引用:同書 57ページ

工場経営に失敗したために現在職業不定のフリーターのようですが、目つきが悪く、おまけに昼間から酒を飲む、ちょっとガラの悪いチンピラのような人物です。

一応、子供は大事にしているっぽいですが、父親らしい威厳はあまり感じられません。ただ、このあと体育祭ではかぐやと絡んだりして色々聞き出すなど、話しを引っかき回す藤原書記のような存在になっていますので、今後は登場機会も増えるかもしれませんね。

判明する石上の過去

体育祭が始まり、各自練習したことを発表したり、競技を楽しんだりと体育祭をエンジョイする生徒会の面々。

石上も練習を続けた応援団の出し物をなんとか無事に済ませ、久々の充実感を味わっておりました。

が、そこへ大友京子という女生徒が現れます。

石上の忘れたい過去・大友京子

引用:同書 142ページ

彼女こそ石上が最も忘れたい過去の象徴。ここで石上がなぜ同級生から嫌われているのかがわかります。

それによると、石上が中学生だった頃、クラスメートだったのが大友であり、普段一人でいる石上を大友は何かと気にかけていてくれたようです。

そんな大友に荻野という彼氏ができます。荻野は演劇部の部長で、いつも人の輪の中にいるような人気者だったとのこと。

そんな二人が恋人同士になったまではよかったのですが、この荻野というのがクセ者だったらしく、どうやら女と付き合ってはそれを仲間うちで食い物にしてきたような人物だったようです。

それを察知した当時正義感が強かった石上は、この悪事の証拠を掴み、荻野に“もうやめろ”と説得しようとします。しかし、それをやめられないという荻野は、代わりに自分の彼女であるはずの大友を石上に差し出してきたのです。
おそらく大友を好きにして良いから、今までの悪事を黙っていてくれとでも言ったのでしょう。

これに激昂した石上は荻野に殴りかかります。しかし、それまで一方的に石上に殴られていた荻野は、騒ぎに他の生徒が集まったタイミングで突然石上に“大友へのストーカー行為をやめろ”と叫び出します。

どうやら石上が大友を好きなのでストーカー行為を繰り返していたが、それが荻野にバレたために殴りかかったという筋書きのようです。
もちろん彼は反論しますが、普段人望が厚いのは荻野のほう。しかも荻野が、“ここで手を引くなら大友には何もしない”・“逆に何か漏らせば大友が可哀想なことになる”と石上を脅してきたため、石上は何も言えなくなってしまいました。

荻野から大友を守るため沈黙する石上

引用:同書 161ページ

外面と違い、卑劣極まりない荻野。そんな彼の挑発に乗って殴ってしまった石上。
これで彼は完全に悪者になってしまい、クラス中だけでなく、守ろうとした大友にすら嫌われてしまうハメになってしまいました。
これが石上が同じ学年中から嫌われている理由ということで、思っていた以上に重たいものでした。

生徒会との出会い

まわりから嫌われた石上ですがそれだけではなく、暴力沙汰を起こしたため停学1ヶ月と山ほどの課題を与えられるハメに。
さらに家では両親から怒られ悲しまれますが、荻野の脅迫により真実をまわりに話すこともできず、精神的にかなり追い詰められることになってしまいました。

それでも自分が悪かったという反省文だけはどうしても書けず、停学期間が終わっても部屋から出られない引きこもり状態に。そうこうしているうちに中学は卒業してしまい、いつのまにか高校に進学していました(問題児の石上が進級できたのは真面目に課題は提出していたことと、伊井野ミコの尽力があったようですが)。

しかし学校へ行けないのは相変わらずで、誰にも真実を話せず、誰にも理解されない日々を過ごす石上。
そんな時、噂を聞きつけた白銀たち生徒会の面々がこの件を調査して、あっさり真相にたどり着き、石上の元へ現れます。

石上の過去の真相を暴く白銀会長

引用:同書 183ページ

誰にも話さなかった真実に簡単にたどり着くとは、やはり生徒会のメンバーは優秀な人たちなんだなと改めて思いました。特に上の白銀はかっこいいですね。

さらに追跡調査してみると、荻野は真相がバレることを恐れて女生徒への加害行為を控え、大友とも石上との件があった直後に別れ、その後もかなり気を遣っていたとのこと。結果的に石上は大友を守ることができ、さらにこれから出るであろう被害も防ぐことに成功していたのでした。

その後は語られませんでしたが、おそらくそれがキッカケで生徒会に入ったと思われる石上は、過去を引きずりながらも現在に至っているようです。

ちなみに大友は頭が悪かったらしく進学試験に落ちたため女子校へ転校、荻野はちゃっかり暗躍したかぐや様(と秀知院VIPの面々)によりこちらも転校しているようでした。なので荻野に関しては再登場はなさそうです。

うるせぇ ばーか

さて、過去を吹っ切ろうと思って応援団に入った石上でしたが、大友が現れたことでかなり動揺してしまい、つらい過去を思い出して周りが見えなくなってしまいます。

そんなとき声をかけてくれたのは、やはり白銀。

石上の背中を押す白銀

引用:同書 180ページ

これで自分をわかってくれる人が身近にいたことを思い出した石上は、罵声を浴びせる大友に向かって白銀直伝の一言で返します。

うるせぇバーカ

引用:同書 190ページ

これで吹っ切れたのか、前に踏み出していく石上。この一言と演出はかなり良かったですね。
その後も石上は応援団として参加を続け、石上が属する紅組は晴れて勝利。これで本当に石上は前を向いて進むことができるんだなと思いました。

オマケ

お気に入りの早坂は出番が少なめでしたが、母親に体育祭に来てもらいたがっていたシーンは年相応でかなりよかったです。でも“マザコン”は酷くないですか?かぐや様。

年相応の姿を見せる早坂

引用:同書 127ページ

感想

白銀の父親や秀知院のサブキャラのちょい見せなど、今後の展開を期待させるシーンが随所にあった第9巻ですが、見所はなんといっても裏主人公である石上の成長物語でしょうか。

彼の過去が明らかになると同時にそれを振り切っていく過程は演出のうまさもあって非常に心に残りました。

とくに演出について印象に残っているのが、顔が見えていなかった応援団の面々。

石上を何かと気にかけてくれるつばめ先輩

引用:同書 31ページ

最初はモブキャラだからだと思っていたのですが、これは石上がいつも人の顔やまわりをよく見ていないという演出だったようです。

なので、過去を振り切った石上がまわりを見回したときに、初めて顔が描かれました。

石上が見た応援団

引用:同書 202ページ

この演出は石上の心境を自分も体験しているような感じがしてとても面白かったです。
最近の『かぐや様は~』はギャグもキレていますが、こういった演出もよくできているので毎回楽しんでいます。
そのうちアニメ化するでしょうが、その際はぜひこうした演出は大事にしてもらいたいところです。