『タコピーの原罪』上巻 ジャンプラ初の1日200万PVを突破した異色作

タコピーの原罪。上巻の表紙。初版
引用:タイザン5(著)『タコピーの原罪』上巻 表紙 集英社 2022年3月発行より

ジャンプ+で連載中の『タコピーの原罪』上巻が発売されたので買ってきました。昨年12月に第1話が配信されるやいなやTwitterトレンド入りし、その後も各話が配信されるごとにネット上で大きな話題に。このコミックスも発売前に重版となるなど、異例のヒットとなっております。

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タイザン5(著)『タコピーの原罪』上巻

『タコピーの原罪』はジャンプ+で短期集中連載されている作品。作者のタイザン5先生はこれが初連載作品とのこと。第1話が配信されるとその絵柄とは裏腹な衝撃展開の連続に、ネット上ではたちまち話題に。ジャンプ+では連載作史上初の1日200万PVを突破し、そのままの勢いでコミックス上巻が発売されました。

発売直前には重版がかかり、アマゾンでは発売後に売り切れとなっております。

上巻では第1話~第7話までと、おまけマンガが4ページ収録されております。

表紙は主人公の久世しずか。

タコピーの原罪。上巻の表紙。初版

引用:タイザン5(著)『タコピーの原罪』上巻 表紙 集英社 2022年3月発行より

こちらは帯。改めて見ると、タコピーのデザインってすごく攻めてるな。

タコピーの原罪の帯。タコピーかわいい

引用:タイザン5(著)『タコピーの原罪』上巻 表紙 集英社 2022年3月発行より

発売を記念して、声付きの紹介動画も公開されております。

衝撃の第1話

主人公の少女・久世しずかは小学生ですが家庭環境は劣悪で、父親は家庭を捨てていない、母親は水商売系のお仕事をしていてほとんど家にいないというほぼネグレクトの環境。そのうえ学校では同級生の雲母坂まりなとその取り巻きからいじめを受けており、非常に過酷な日常を送っています。心の安らぎは飼い犬のチャッピーのみ。チャッピーといるときだけは、彼女の笑顔でいられます。

そんなしずかはある日、宇宙人のハッピー星人・タコピーと出会います。

タコピーと出会ったしずか

引用:同書7ページより

タコピーはタコのような見た目をしていて、特徴的なのは人間にハッピーになってもらうための「ハッピー道具」という、まるでドラえもんみたいな便利な道具を持っていること。

ただ、ドラえもんと決定的に違うのは人間に対する知識で、人に関する知識や理解が全然無いということ。非常に表面的なことしか理解できないようです。しかし、タコピー自身に感情がないわけではなく、怖いと思ったり悲しいと思って涙を流すことはします。要するに、人の悪意にまったく触れたことがない・想像力が無いだけの文字通り頭の中までハッピーなキャラクターであるということです。

なので、暴力などいじめを受けているしずかが単に同級生とケンカしているだけと思っていたりと、読者的にはかなりイラつくキャラ設定になっております。このマンガを受け付けるかどうかは、陰湿・凄惨な展開よりも、このタコピーのキャラを受け入れられるかというくらい人によっては苦手なキャラだと思います。

そのタコピーはしずかにご飯をもらったことから彼女と遊んだり写真を撮ったりと懐きますが、ある日、飼い犬がいなくなり(まりなの謀略で保健所送りになった)落ち込むしずかに、ハッピー道具を渡してしまったことで事態は急展開。心の支えだったチャッピーを失ったしずかは、なんと首を吊って自殺してしまいます。

絶望したしずかはこの世に別れを告げる

引用:同書40ページより

初見のときはこの展開にメチャクチャ衝撃を受けてしまいました。ここまでの流れからある意味予測できるのですが、絵柄的にそこまで行く展開が頭からすっぽり抜けていたようで完全に意表を突かれてしまいました。

この後どうするのかと思ったら、タコピーが以前しずかと撮った写真には時間を巻き戻す機能が付いていたようで、タコピーはしずかが自殺しない・笑顔でいられるようにするため過去に戻り、彼女のことをよく知るために一緒に学校に行くことになります。

こうしてタコピーはいつかしずかの笑顔を見るために長い試行錯誤をしていくことになります。

いじめっ子・雲母坂まりなの事情

学校に行くと、しずかがどんないじめを受けているかを目の当たりにするタコピー。ですが、人や感情に関する知識が乏しいためか、目の前で見てもそれがいじめだと認識できません。なので、しずかが自殺した理由も見当違いのことばかり。そして、何か思いつくたびに時間を巻き戻してしずかの力になろうとします。それが結果的にいじめっ子である雲母坂まりなの神経をより苛立たせ、さらなるいじめに繋がるという悪循環。この辺りは読んでいて、特にタコピーにイライラしてきますね。

でも、まりなはなぜそんなに執拗にしずかをいじめるのか。実はまりな父はしずか母と不倫関係にあるようで、まりな母はいつもそのことでケンカ。さらに、まりなを虐待しているのでした。

母親からの虐待を受けていたまりな

引用:同書84ページより

自分の家庭が崩壊したのはしずか母のせいだとわかっているまりなは、その娘であるしずかをいじめていたということで、業の深い人間関係というか、どうやってもしずかとまりなは仲良しになれない関係ですね。

そんな関係をまったく理解できないタコピーは、相も変わらず二人を仲直りさせようとあれこれ見当違いのことをやります。しかし、怖いまりなにしずかの身代わりになって立ち向かったり、うまくいかなくてしずかに謝ったりと、一応タコピーなりに真剣に取り組んだ結果ではあります。ただ、前提が間違っていて絶対にうまくいかないというだけ。つまり地獄です。

タコピーの決意

そんな中、しずかが自殺する決定的な出来事が判明。つまり彼女が可愛がっていたチャッピーが保健所送りになった原因がわかります。それは予想通りまりなの差し金で、チャッピーを散歩していたしずかに暴力をふるうことでチャッピーに自分を襲わせる、という卑劣ながらも効果的な方法でした。

しずかの心を折るために、汚い手を使って貶めるまりな

引用:同書96ページより

小学生ながらしずかに確実にダメージを与えられる最も効果的な方法を選ぶあたり、まりなは相当狡猾ですね。これがうまくいき、チャッピーは保健所送りとなり、しずかのわずかに残っていた心はブチ折られて自殺してしまう。というわけです。

これを知ったタコピーは時間を巻き戻し、まりなと出会わないよう散歩コースを変えますが、何度やっても必ずまりなと遭遇してしまいます。その数、実に101回。

101回目の失敗

引用:同書106ページより

この直前、タコピーはしずかを笑顔にする決意を彼女に語っているのですが、それが無残に打ち砕かれるという運びになっていて、しずかの絶望感がより強調されてます。ここら辺はすごくうまい演出だなと感心しました。

そして、チャッピーを失ったしずかにトドメをさそうと、しずかを人気のない林へ誘い出すまりな。ここでしずかに対して物理的にも精神的にもキツいことをして彼女に心を完膚なきまでにヘシ折ろうとします。このままではしずかがまた自殺してしまうと悟ったタコピーは、彼いわく「勇気をだして」しずかを助けるためにまりなに立ち向かいます。

タコピーの原罪

引用:同書135-136ページより

そして今巻で(物理的にも精神的にも)1番の衝撃が。なんと、タコピーはまりなを殴って殺してしまいます。この結果に戸惑うタコピーですが、タイムカメラで殴ったためにカメラは壊れてしまい、これで時間を巻き戻すこともできなくなりました。

まさか、まりなを殺してしまうとは思いませんでしたが、さらに時間を巻き戻すことができなくなるというハードな展開に初見ではあっけにとられてしまいました。因果応報とも言えますが、直前にまりなの事情も出ていたことから、知らず知らずのうちにまりなに感情移入してしまったようです。なので、余計に衝撃を受けました。

そして、まりなが死んだことに本作イチの笑顔で感謝の言葉を述べるしずか。まさかタコピーの願いであるしずかの笑顔がこんな形で実現するとは・・・。家庭環境やいじめがあっての結果でしょうが、しずかの精神もそうとう壊れていて正直不気味です。最後のタイトルロゴがどーんは圧巻でした。

第三のキャラ・東くん

死んだまりなを放置してその場を離れるしずかとタコピー。ですが、それを同級生の東くんに見られてしまいます。まりなは魔法で死んだと説明するしずかですが、もちろんそんな理由は通用しません。

東くんは早く自首するよう勧めますが、捕まるとチャッピーを探しに行けないというしずかは、彼の手を握って「助けて」と懇願します。これにまんまと落ちる東くん。

堕ちた東くん

引用:同書164ページより

実は彼の家庭環境もかなり重いもので、虐待こそないものの教育ママの母親から過度なプレッシャーを掛けられており、日々その重圧に押しつぶされそうになっていたのでした。そんななか密に想いを寄せていたしずかから頼られたらイチコロでしょう。

結局、まりな殺害の隠蔽工作をすることになりハッピー道具でまりなを封印?、さらにタコピーをまりなに変身させて身代わりとし、おまけにチャッピーを探しに東京へ行くという計画にも参加させられるというガッツリ犯罪行為に加担するハメになってしまうのでした。ただ、東くんに関しては苦悩はあっても自分の意思で参加しているためか、あまり同情はできないですね。

とにかく東くんというブレーンを得たしずかは、チャッピーを東京へ向かいに行くため時期を待ちます。この頃になると、しずかがちょっとおかしい精神の持ち主であることが読者にもわかってきたりします。

一方のタコピーはまりなの身代わりとして、彼女の家で暮らすことに。そこではまりなの両親が絶えずケンカしているのを目撃しますが、意外だったのはまりな母がタコピーの変身に気が付いたこと。

タコピーの変身に気が付くまりな母親

引用:同書206ページより

虐待していながらまりなの事は大切だったようで、見た目ではわからないタコピーの変身に気が付きます。そして、まりな母の懇願を見て、まりなを殺してしまったことに涙を流してあやまるタコピー。これも意外でしたが、これは成長とみていいのか。

まとめ

以上、上巻の紹介でした。とにかく衝撃的な展開が容赦なく降りかかってくるので、全編通して緊張感がハンパじゃありません。ジャンプ+で200万PVという驚異の数字をたたき出し、発売前に即重版になるのも納得の作品だと思います。ここ何年かでここまで気持ちがざわついたのは久々です。

登場人物はかなり少ないわけですが、しずか・まりな・東くんという3人のキャラとタコピーという異質な存在が複雑に絡んでおり、ドラマを生んでいます。

また、時間を巻き戻す手段が最悪のタイミングで無くなったことも緊張感を一気に上げております。集中連載のためか物語がどんどん進んでいくので、テンポもすごくいいです。感情の処理が追い付かない部分もあるくらいですが、これを初見で通してみると一気にタコピーの世界観にハマってしまいます。

どんな結末を迎えるのか楽しみで仕方ありません。下巻は4月4日に発売予定です。