『幼女戦記』第9巻 3つの奇跡をその身に宿す脅威のヒロイン誕生

東條チカ(著)『幼女戦記』第9巻 表紙 KADOKAWA 2018年4月発行

引用:東條チカ(著)『幼女戦記』第9巻 表紙 KADOKAWA 2018年4月発行

『幼女戦記』のコミックス最新刊となる第9巻が発売されたので買ってきました。
アンソン大佐との闘いに決着がつくと同時に、ターニャにとって新たなる因縁が生まれる9巻を以下で簡単にレビューしたいと思います。

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東條チカ(著)『幼女戦記』 第9巻

コミックス第9巻では第25話「ノルデン沖の悪魔Ⅲ」、および第26話「ノルデン沖の悪魔Ⅳ」が収録されております。

今回収録されているお話しは、コンプエースで3か月連続付録となっていた別冊(3冊のうちの2冊)の内容をコミックス1冊分にまとめたものとなっております。もっとも話の順番は別冊付録の時とは若干前後していたり加筆があったりしますので、別冊を持っている方でも楽しめるものとなっております(毎巻恒例の用語集もありますし)。

逆にコンプエース本誌に掲載されていたドラマCD「レルゲンの胃痛」のコミカライズは収録されておりません。いずれはこちらも収録していただきたいですね。

表紙はコミックス版『幼女戦記』初となるターニャ以外の人物であるメアリー・スーとその両親。

幼女戦記コミックス第9巻の表紙は、初のターニャ以外の人物。メアリー・スー

引用:同上

メアリーはアンソン・スー大佐の娘であり、今後のターニャにとって因縁深き相手となる人物です。まさに正統派美少女といったかわいらしい外見で、ターニャとの対比が面白いです。

軍に志願した動機

冒頭、話しはターニャが7歳の頃に遡ります。ここでは『幼女戦記』の世界に登場する魔法の説明や航空魔導師の誕生経緯などが説明されました。

それによると魔法を使える者は少数ながら昔から存在していたがささいな力が使えるだけであったのが、産業革命によって演算宝珠が登場することでより強力な魔法が使えることになったとのこと。
これを戦争に応用したのが航空魔導師なのですが、兵士として運用できるほどの魔力量をもった人間はかなり希少な存在だそうで、そのため帝国は幼い子供の魔導適正を調べることで将来の航空魔導師を探していたようです。

ターニャ・デグレチャフも7歳のときに魔導適正を調べられ、(存在Xに仕組まれたためか)非常に大きな魔力を持つことがわかりました。

魔導適正を認められ、軍に志願するターニャ・デグレチャフ

引用:同書 27ページ

こうなると帝国に徴兵されるのは時間の問題、さらに徴兵されればあらゆる戦場へ便利に駆り出されるであろうことは容易に想像できます。
だったら自ら士官学校へ志願し、出世して安全な後方でエリートコースに乗ってやろうとしたのがターニャが軍に志願した動機でした。

その後の活躍は本編ですでに語られている通り。戦果を上げて出世はしたものの不思議?なことにあらゆる戦場へと飛ばされる運命からは逃れられません。
果たして将来、ターニャが望む安全な後方での生活はあり得るのでしょうか。

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宿敵との決着

場面は現在に戻ってノルデン沖。オースフィヨルドを陥落させレガドニアに致命的なダメージを与えたた帝国でしたが、レガドニアのオースフィヨルド奪還を警戒して帝国軍北洋艦隊がノルデン沖の哨戒任務に当たっていました。

そこでレガドニアの水上艦隊を補足、離脱をはかる協商連合の残存艦群としてこれの撃滅を目的とし、ターニャ率いる第二〇三航空魔導大隊に支援を要請してきます。

これに応じたターニャたち大隊は、さっそくノルデン沖に出撃。そこでアルビオン連合王国にレガドニアの要人であるアーバンソール議員を亡命させるために同行していた宿敵アンソン・スー大佐と鉢合わせます。

これまで幾度となく苦戦してきたアンソン大佐との対決でしたが、今回は高度差を生かした突撃により一撃でアンソン大佐に致命傷を与えたターニャ。

ターニャ対アンソン大佐の決着

引用:同書 94ページ

普段敵を寄せ付けない強さを誇るターニャを、唯一苦しめてきたアンソン大佐でしたが、決着は非常にあっけないものでした。娘メアリーからプレゼントされた短機関銃を使うヒマなくターニャに奪われて、無情にも海に沈んでいきました。

この辺の描写は場面の違いはありますが、だいたいアニメと同じでしたね。決定的に違うのは、マンガ版ではアンソン大佐はここで完全に死亡しているのですが、アニメでは存在Xの力により復活しラスボス化していることでしょうか。

アニメ版は一クールの縛りがあったためでしょうが、マンガ版はこれからもっと強力なライバルが出現するためにここでお役御免になったようです。

思わぬチャンス

アンソン大佐を倒したターニャは残りの残存魔導師を蹴散らし、艦隊への攻撃を開始。しかし、さすがに中隊規模の魔導師では艦艇を破壊することは叶わなかったようで、ある程度のダメージを与えたところで事後処理を北洋艦隊に引き継ぎ撤退します。

が、その際に不審な船を発見。それはアルビオン連合王国の漁船母艦(に偽装した)ライタール号でした。
ライタール号には先ほどアンソン大佐が命がけでアルビオンに引き渡したアーバンソール議員が乗船していました。無論そんなことは知らないターニャでしたが怪しい動きをするライタール号を臨検しようと試みます。

そんな時、ライタール号から離れていく潜水艦を発見。これはライタール号から密かに何かが潜水艦へと移送されたと感づくターニャ。
その何かを押さえることができれば、その功績で出世できるかもと息巻くターニャは、その矛先を潜水艦へと向けるのでした。

思わぬ手柄のチャンスに興奮するターニャデグレチャフ

引用:同書 150ページ

このシーンは別冊にはなかったので、加筆シーンですね。
果たしてアーバンソール議員は無事にアルビオンへと亡命できるのでしょうか。

お伽噺の主人公になったみたい

ターニャに存在Xと呼ばれている神々。彼らは人々の信心を喚起するため、これまでたびたび神の力を宿したモノ(聖遺物など)を地上に遣わせたり、特定の人物に奇跡を授けてきたといいいます。しかし、奇跡を与えられた人間は非業の死を遂げるものが多く、近世では控えられてきたそうです。

それが(信仰心の無さから逆に奇跡を授けられた)ターニャ・デグレチャフは死ぬことなく与えられた力をフルに活用しており、人間に奇跡を与えたケースとしては稀な成功例になったとのこと。

そこで、新たに3つの奇跡を別々の基準から人間に授けることを決定した神々。
もっとも、本来は奇跡を与えられた人間が1人くらい死んでしまってもいいように複数の人間に別々に奇跡を与えるつもりだったようですが、偶然にも奇跡の基準に適合したのがアンソン大佐とその妻、そしてメアリーという一家3人でした。

神々の三つの奇跡を受けたメアリー・スー

引用:同書 154ページ

結果、三つの奇跡すべてがメアリー・スーという一人の少女に集中してしまうことに。
ターニャの能力の高さは本人の能力はもちろん、神の奇跡によるところも大きいのですが、その奇跡を3つも持っているメアリーがいかに脅威的な存在かがわかります。

メアリー自身は今は航空魔導師ではない一般人ですが、亡命先である合州国では帝国以外で唯一女性軍人を採用しているとのこと。ここで訓練を受けた後、ターニャの前に立ちふさがることでしょう。

今後は化け物じみた奇跡をその身に宿したメアリーに、父の仇として狙われることになるであろうターニャ。これまで以上に苦労しそうです。

感想

因縁のあったアンソン大佐とついに決着したターニャ。これまでの激闘から見るとややあっさりした最後でしたが充分楽しませてもらいました。
アニメ版では一度死亡したあとに存在Xによって復活、人間というより存在Xの操り人形みたいになっていましたが、マンガ版では最後まで人間らしく妻や娘を思って死んでいきました。
家族のため祖国のため文字通り命がけで戦い抜いたアンソン大佐は実にかっこよかったです。

そして、ターニャの新しい因縁の相手となるメアリー。レガドニアから合州国へと逃れた彼女はまだ一般人ですが、アニメ最終回でも描かれていたように軍に志願し、これから航空魔導師として訓練を受けることでしょう。

見た目が完全に正統派ヒロインっぽいメアリーですが、父親を失ったことでますます物語の主人公っぽくなってしまいました。
公式でも“主役交代?”などと弄られるターニャですが、確かにこんな表情をしているヒロインよりはメアリーのほうが百倍ヒロインらしいですね。

社会のルールを尊び、平和を愛する一個人(ターニャ談)の表情

引用:同書 92~93ページ

まぁ主役交代はあり得ないでしょうが、メアリーを題材にしたスピンオフなんか非常に作りやすそうですよね。『幼女戦記』のスピンオフは現在、流行りのグルメ漫画『幼女戦記食堂(1) (角川コミックス・エース)』(AA)ぐらいしかないと思いますので、ぜひ新しいスピンオフとして彼女を題材にしたものを作っていただきたいです。

次回のコミックス第10巻は9月26日発売予定となっております。