『幼女戦記』第10巻 ちょっとの油断と不幸な偶然で銃殺刑のピンチに・・・

東條チカ(著)『幼女戦記』第9巻 表紙 KADOKAWA 2018年4月発行

東條チカ(著)『幼女戦記』第10巻 表紙 KADOKAWA 2018年9月発行

完全新作となる映画の公開を2019年2月に控える『幼女戦記』のコミカライズ第10巻の哨戒記事。今回は珍しく失態を犯したターニャが名誉挽回を誓うお話。

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東條チカ(著)『幼女戦記』 第10巻

『幼女戦記』のコミックス第10巻。表紙は剣を持つターニャ。実に勇ましいです。

引用:同上

前回表紙の座を奪われたターニャでしたが、今回は無事表紙に戻ってくることができました。

レガドニア協商連合の宿敵・アンソン大佐をついに打ち取ったターニャ。残るレガドニア艦隊も壊滅目前というところでしたが、ここで敵残存兵力は味方の帝国海軍北洋艦隊へと任せ、一足先に帰路につきます。

ところがそこで、アルビオン連合王国の不信な船を発見。これは何かあると踏んだターニャは強硬臨検を行おうとしたところが前回までのお話しでした。

第10巻では第27話「ノルデン沖の悪魔Ⅴ」、第28話「ノルデン沖の悪魔Ⅵ」を収録。コンプエースで3か月連続付録となっていた別冊の内容に加筆されたものが収録されております。

前回のレビューはこちら。

宿敵との決着、そして新たな因縁が生まれる第9巻。

ターニャ、やらかす。

レガドニア協商連合の残存軍の撃滅命令を受けたターニャ率いる第二〇三遊撃航空魔導大隊は、ノルデン沖にてレガドニアのエース・アンソン大佐を撃破し、残る敵軍を帝国海軍北洋艦隊に任せ帰路につきます。

しかし、その途中、レガドニアの亡命作戦を遂行するアルビオン連合王国の特務艦ライタール号と潜水艦シルティスを発見。位置的に何かあったと踏んだターニャはシルティスへの強制臨検を行います。

この時ターニャはシルティスの動きを止めるため威嚇射撃を行うのですが、部下が「うっかり」当ててしまいシルティス号は損傷したうえ、艦長も負傷してしまいます。臨検を受けなければこれ以上逃げられないと踏んだアルビオン側は、亡命させるつもりだったレガドニアのアーバンソール議員を(亡命を帝国側に悟らせないため)苦渋の決断で抹殺。レガドニアとアルビオンの極秘亡命作戦は失敗してしまいます。

亡命失敗と判断し、アーバンソール議員を消すことにしたアルビオン

引用:同書15ページ

一方のターニャ側はまさか亡命作戦が展開しているとは思ってもみなかったわけですが、結果的に何事もなかったアルビオンの艦艇を臨検したうえ、威嚇射撃により損害も与えてしまい、帝国とアルビオンの間にいらぬ摩擦を生むことになってしまいました。

さらにターニャにとっては運が悪かったことに、補足して座標を送り追撃を任せた帝国海軍北洋艦隊がレガドニアの残存艦隊を取り逃がしてしまいます。これは北洋艦隊の索敵能力が未熟だったためですが、ターニャがそのままレガドニア艦隊を攻撃していれば全滅させることができなのは言うまでもありません。

客観的に見ればノルデン沖でのターニャの行動は、全滅させることができた敵を味方に押し付けて逃亡し、さらにアルビオン連合王国との間に不要な火種を作ってしまったということになります。
これではよくて降格、最悪銃殺刑もありえるとして一気に青ざめるターニャ。

降格か最悪銃殺刑も覚悟するターニャ

引用:同書66ページ

しかも中央軍参謀本部よりレルゲン中佐を公用使として向かわせるので身辺整理をしておけとの報告を受けたことで完全に終わったと思い込んでしまいます。

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思惑とは真逆の方向へと進む

ターニャが絶望的な報告を受ける少し前、帝国中央軍本部ではレガドニア残存艦隊を取り逃がしたことへの検証が行われていました。

北洋艦隊がレガドニアを取り逃がしたことには非難がありましたが、それよりも悪天候下でそのレガドニアを二度も補足したターニャたち魔導大隊の能力を高く評価する声のほうが大きく、海軍配備の海兵魔導師の育成・運用方法を改善させることのほうが急務であるということで一致。

これによりターニャへのお咎めはなく、むしろ教導隊経験者でもあるターニャに海兵魔導師を訓練させるため、北洋艦隊との合同演習へ参加させることで様子を見ることになりました。これがうまくいけばターニャには今後最前線で新兵を鍛える教導隊のような役回りをさせるつもりの上層部(というかゼートゥーア)。

しかも、これがターニャ自身が望んでやまないと信じて疑わないわけですから始末が悪いです。

帝国のため、ターニャが常に最前線への戦いを望んでいると信じてやまない上層部

引用:同書62ページ

結局、北洋艦隊との合同演習後、ターニャたちは最前線であるライン戦線への転属が決定。後方でのエリートコースこそを望むターニャの思惑とは、またしても真逆の方向に話しが進んでしまいました。

相変わらずすれ違うレルゲンとターニャ

中央軍本部で決まった上記の命令を直接ターニャへ知らせる役目となったのは、お馴染みレルゲン中佐。ターニャへの命令伝達のため、第二〇三大隊の駐屯地に赴きます。

てっきり銃殺されると思っていたターニャは、レルゲンの転属命令に歓喜。名誉挽回のチャンスを与えられたと喜びます。

レルゲン中佐に感謝するターニャ

引用:同書88ページ

次の機会があれば確実に敵を撃滅すると誓うターニャに戦慄するレルゲン。彼からしてみればそこまでしなくともよいと思っているのですが(実際、参謀本部もターニャを評価しているわけですから)、温情で銃殺を免れたと思っているターニャにその真意は伝わりません。

北洋艦隊との合同演習への参加を問われたターニャの嬉しそうな表情を見て、ますますターニャが戦闘狂だと思い込むレルゲンでした。

それにしてもレルゲンとの会話シーンは毎回、ターニャがえらい可愛く描かれているというか完全に女の子ですね。とても中身が中年のオッサンとは思えません。

乙女チックな表情のターニャ・フォン・デグレチャフ少佐

引用:同書95ページ

煉獄だろうと赴き、征服する事こそ軍人の本務

銃殺もありえると思っていたレルゲン中佐の通達でしたが、お咎めがないばかりか名誉挽回のチャンスももらえたと思い一安心したターニャは、大隊のメンバーを集め、中央参謀本部からの通達内容を話します。

ノルデン沖での戦闘では大した戦果を挙げられなかったばかりか、中立国であるアルビオン連合王国を刺激するような失態を演じてしまったことを悔いるターニャ。今回は失敗してしまったが、参謀本部はそれでもターニャたちに期待しているとしてこれに全力で応えるべきと話します。

ここでターニャの真意では、今後は命令に絶対忠実・中立国であるアルビオンに手を出すなどもってのほかという意味だったのですが、大隊メンバーは帝国の邪魔をするものはたとえ中立であっても躊躇なく叩き潰す意味だと曲解。

命令には絶対に忠実にというターニャと命令に背いてでも戦う決意をする航空魔導大隊

引用:同書108ページ

そのあとのターニャのセリフ“煉獄だろうと赴き、征服する事こそ軍人の本務”、”どの様な敵であっても喰らいつく”という言葉でターニャの意思を完全に意味を取り違えてしまいます。

煉獄だろうと赴き征服することこそ軍人の本務

引用:同書108ページ

レルゲン中佐だけでなく大隊メンバーでもこの有様ですから、今後の戦いではターニャの意思とは関係なく戦火が広がっていきそうです。

なお、このあとは予定されていた北洋艦隊との合同演習に臨んだターニャたち第二〇三遊撃航空魔導大隊は、海兵魔導師たちを圧倒し、軍上層部に改めて実力を示します。

そしてそれが早く最前線に戻りたいと勘違いされ、合同演習の翌週にはライン戦線への転属が正式に下命されてしまうのでした。

周辺諸国の動き

ところでレガドニアとの亡命作戦を阻止されたアルビオン連合王国では、極秘だったはずの亡命作戦を事前に察知していた(実際には違いますが)帝国軍情報部と実行部隊だったターニャ率いる航空魔導大隊の恐ろしさを改めて認識することになります。

さらに以前のノルデン動乱の折、連合王国軍は帝国軍に攻撃されておりますから、今回の件と併せて帝国が連合王国を完全に敵と見なしていると判断。

内通者を疑うアルビオン連合王国情報部

引用:同書29ページ

帝国との開戦に備えて合州国とルーシー連邦との同盟を模索し始めます。さらにレガドニアの残存艦隊が逃げ込んだフランソワ共和国でも帝国との戦闘に備えた動きが本格化し始めます。

ダキアやレガドニアとの戦いに一区切りついたばかりの帝国軍ですが、近隣諸国すべてが帝国の敵になるような動きを見せ始め、今後は着実に世界大戦への道に進んでいくことになるでしょう。

感想

長かったレガドニアとの戦いも一段落したと思ったら、アルビオンやフランソワという新しい脅威が現れつつあり、帝国は周辺諸国すべてを敵に回しかねない非常に危険な道に進みつつあります。

その中心にいるのは間違いなくターニャであり、後方勤務を願ってやまない彼女の思惑とは真逆の方向へ世界が動いていく中で彼女がどう立ち回っていくのか非常に楽しみです。