『幼女戦記』第16巻 前代未聞の人間ミサイル作戦を完遂せよ!

幼女戦記コミックス第16巻の表紙はみんなで踊るマンガ
東條チカ(著)『幼女戦記』第16巻 表紙 KADOKAWA 2019年10月発行

毎回、高クオリティーで楽しませてくれる『幼女戦記』の漫画版第16巻が発売したので買ってきました。今回はフランソワ共和国軍相手の戦争に、決定的な一撃を与える最重要作戦をターニャたちが決行します。

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東條チカ(著)『幼女戦記』 第16巻

16巻では第44~46話までを収録。前巻については、以下の記事を参考にしてください。

『幼女戦記』第15巻 ターニャたち魔導大隊に最大のピンチが訪れる
帝国軍の大規模作戦のため、撤退のしんがりを務めることになったターニャ率いる第二〇三航空魔導大隊。これまでにない激しい戦闘が彼らを待ち受けます。

『幼女戦記』16巻の表紙は珍しくターニャ以外にヴィーシャやヴァイス、グランツといった第二〇三航空魔導大隊の面々が描かれおります。なぜか富野由悠季作品のEDのようにダンスしていますけど、帝国の勝利祈願か何かでしょうか?

東條チカ(著)『幼女戦記』第16巻 表紙 KADOKAWA 2019年10月発行

さらに裏面にはレルゲン中佐やシューゲル博士のほか、ゼートゥーアやルーデンドルフといった帝国軍重鎮たちも踊る・・・。

東條チカ(著)『幼女戦記』第16巻 表紙裏 KADOKAWA 2019年10月発行

皆、まるで讃美歌でも歌っているかのように爽やかですが、実際には敵をだまくらかして必殺の一撃をぶちかましてやろうとしているところです。

ミサイルに乗って敵司令部を直接攻撃

その必殺の一撃となるのが対フランソワ戦第2作戦の【衝撃と畏怖作戦】です。第1作戦の【霧と太陽作戦】では帝国軍がライン戦線をあきらめたと思わせるかのように戦線から全軍後退。そのスッポリと空いた空間に、フランソワ共和国がラインの戦力だけでなく予備兵力まで投入して限界まで指揮系統と補給線を伸ばしながら収まります。

その状況を確認後、今度は極秘開発していた長距離噴進弾に航空魔導師を詰め込み、ライン戦線後方のフランソワ共和国の司令部を直接攻撃するのが今回の【衝撃と畏怖作戦】のお話し。ラインを埋めるため手薄になった敵司令部を電撃的に叩こうというわけです。これが成功すればフランソワ共和国軍は指揮命令系統がズタズタになり、もはや帝国軍に太刀打ちすることはできないでしょう。

この作戦を実行するのは、またしてもターニャたち第二〇三航空魔導大隊。すでに帝国のライン戦線を大規模後退させるために全滅も覚悟の上で殿軍を務めたばかりの二〇三大隊ですが、今度は音速で飛ぶミサイルに乗り込んで敵司令部を直接射爆したうえ、少数で乗り込んで指揮系統を破壊せよというこれまた無茶苦茶な作戦を命じられてしまいます。

なんだか重要な作戦にはすべてターニャたちが絡んでいるというか、ターニャがいなかったらとっくに帝国軍は敗れ去っているのではと思うくらいの依存っぷりです。が、この作戦には強力な演算宝珠が必要であり、最も強力な演算宝珠であるエレニウム九五式とその量産型であるエレニウム九七式を部隊単位で運用しているのがターニャたち第二〇三航空魔導大隊のみであることも事実。

しかも“ミサイルに航空魔導師を乗せる”という突飛なアイデア自体はターニャの口から出たもので、まさに因果応報、身から出た錆びとも言えます。

自らの軽口が現実になってしまい後悔するターニャ

引用:同書44-45ページより

絶望的になっても決まってしまったからにはしょうがない。心の中では嘆きながらも、作戦の成功と勝利を確信した言葉を吐かなければならないのが上官であり英雄の辛いところです。

秘匿名称“V-1”

さて、肝心の敵司令部へ行くのに使う長距離噴進弾とはどんなものか。これは帝国軍のランスベルク秘匿兵器実験工廠というところで作られているもので、噴進弾に魔導師が乗り込むスペースを作り、敵に察知されない高度30,000まで打ち上げるユニットを備えた秘匿名称“V-1”と呼ばれる兵器でした。

帝国軍の秘密兵器V-1

引用:同書82ページより

見た目、いかにもといった感じでゴツいV-1ですが、この時点でV-1の燃料を燃焼させる機関の耐久度が現在の技術ではクリアできず、試作機は大爆発を起こしているとのこと。ただでさえ無謀な作戦なのに、肝心かなめの長距離噴進弾も一度も成功していないとなればもはや笑うしかないでしょう。

一度も成功していない兵器で国家一の作戦を完遂しようとする帝国軍

引用:同書76ページより

普通なら一度も成功していないこんなモノに一国家の今後の命運を託すとは思えないのですが、それを何とかすると思わせるのがターニャの凄いところなのか。実際、理論上はターニャたちの部隊が運用するエレニウム九七式を展開すれば、この技術上の問題はクリアできるらしい。

理論上は可能、で無謀な人間ミサイル作戦を行わされるターニャ

引用:同書77ページより

もはや後には引けずというわけで、この作戦をもって戦争を終わらせる決意をするターニャ。実際、帝国が現在まともに戦っているのはフランソワ共和国だけで、しかもこの作戦が成功すれば敵司令部は壊滅、主力は生きているとはいえ各地に伸びた敵軍を各個撃破するだけです。

悪魔のミサイル

いよいよV-1に乗り込むターニャたち。カウントダウンの中、エレニウム九七式を展開して発射を待つ面々。そして、カウントゼロと同時に爆発的なエネルギーにより天高く飛び立ちます。

発射は成功し、音速の壁を越えながら高度30,000に到達するV-1。そこからは敵司令部に向けて分離しながら一気に降下していきます。

V-1によるフランソワ共和国軍、ライン戦線後方の司令部を射爆攻撃

引用:同書128-129ページより

この光景を遠くから見たものは流れ星か鳥ぐらいにしか思わなかったようで、まさか航空魔導師を積んだミサイルとは夢にも思わなかったことでしょう。しかも乗っているのは【ラインの悪魔】であり、これから敵軍に決定的な一撃を与えんとしているわけです。

そして、敵司令部近くでV-1から脱出。V-1はそのままミサイルと化して司令部を射爆、ターニャたちは敵軍に悟られぬよう魔力をカットして近くの森へ身を隠します。ちなみにターニャはV-1からパラシュートで脱出し、HALO降下して着地する際に五接地転回法を披露しております。

ターニャによる五接地転回法

引用:同書149ページより

本人曰く、生前に読んだ格闘漫画の知識らしいですが、生前堅物だったターニャ(の前世)があの漫画を読んでいたとは意外でした。

もう少し大胆にやれるのではないか

敵に察知されることなく、司令部を攻撃し、なおかつ近くに潜むことに成功したターニャたち第二〇三航空魔導大隊(の選抜中隊メンバーたち)。ここからは敵の増援が来る前にできる限り司令部の要所を破壊し、機密情報を盗み出さなければなりません。

通常時であれば司令部は最も強固な守りのハズですが、さきのライン戦線での作戦によりフランソワ共和国軍は相当数の兵力がラインまで出払ってしまっている状況です。さらに、周辺地域を含めて完全に自軍の支配下にあると思っているわけですから、まさか帝国軍の襲撃があるとは思ってもみないことでしょう。

そこへ帝国軍の技術を結集したV-1でのミサイル攻撃があったのですから、フランソワ共和国軍は混乱の極みにあるといっていいでしょう。さらに、まさか百戦錬磨の航空魔導師中隊まで近くに潜んでいるとは絶対に考え付きません。

そんなわけで攻撃を開始したターニャたちは、まさに赤子の手をひねるかのごとく司令部に侵入。敵を次々と倒していきます。そして、敵軍をここまで好き放題できるこの状況なら、さらに戦果拡張できるのではと考えるターニャ。

作戦がうまくいき、もっと戦果を期待するターニャ

引用:同書172-173ページより

できるのにやらないは無能のすること、と思ってそうなターニャらしいセリフです。

ところで敵を一方的に蹂躙する状況はダキアのときに似ていますが、フランソワ共和国はダキアと違い本来は帝国軍といえども一筋縄ではいかない相手です。実際、ライン戦線の膠着を長年打ち破れなかったわけですから、フランソワ共和国軍は十分強敵でしょう。

それをここまで好き放題できるのは、ターニャの助力があったとはいえ帝国軍参謀本部の作戦とそれを実行できた帝国軍の科学力のおかげです。この歯車が噛み合ったときの帝国軍の強さは、まさに戦争芸術と言ってもいいくらいの芸術的な力といえます。この総合力が帝国の真に恐ろしいところですね。

そんなわけで敵司令部の直接攻撃だけでなく、さらなる成果を求めるターニャでしたが、そこにアルビオン連合王国の情報部の姿が・・・

アルビオン連合王国の情報部の人

引用:同書174ページより

この人(名前がわからない)マンガ版ではたびたび登場しておりますが、“なぜ奴がここに・・・”とか言っていますけど、この人こそなぜここにいるのか。

これまでもアルビオン連合王国とフランソワ共和国が情報共有している描写はありましたが、今回も情報交換の一環でしょうか。レガドニア協商連合での議員亡命に続き、またしても【ラインの悪魔】に苦い想いをさせられるのかと思うと、この人もたいがい苦労人ですね。

感想

15巻に引き続き、フランソワ共和国との闘いをめぐる重要な作戦が展開された16巻。帝国軍にとって目下の最大の敵であるフランソワ共和国との闘いもいよいよ最終局面に入りそうで、どちらも自軍の勝利間近と思っているところがまた面白いですね。

また、各シーンの描写も相変わらず丁寧でした。戦闘ばかりで作画も大変そうだった15巻に比べれば多少マシでしょうけど、今回もV-1など兵器群の書き込みや描写がとても丁寧で、これで筆も早いというのですから作者の東條チカ先生の凄さを改めて感じました。

そういえば、合州国に亡命したメアリー・スーの様子も描かれておりました。合州国アーカンソー州で穏やかに暮らしていたメアリーの元へ、アンソン・スー大佐が戦死した情報がもたらされます。

メアリー・スーがターニャを倒す決意をする

引用:同書37ページより

そして父が【ラインの悪魔】と戦って戦死したことを知ったメアリーは、ついに軍へ志願する決意を固めます。

すでに神の加護を三重に受けているメアリーですが、着々とターニャのライバルになるフラグを立てております。劇場版アニメに登場した際には、初期以外ほとんど手傷を負わなかったターニャを殺す寸前まで追い詰めておりましたが、果たしてマンガ版でその活躍が描かれることがあるのか、非常に楽しみです。

あと、第二〇三航空魔導大隊にターニャとヴィーシャ以外に女の子がいる描写がありました。ターニャの心の叫びに潰されていますけど、コマの左下にいる子です。

第二〇三航空魔導大隊の新キャラ?の女性隊員

引用:同書156ページより

V-1からの降下時にはぐれてくれることを期待して入れられた、ターニャ曰く“練度の劣る者”らしいのですが、名前もこれまで描写があったかも不明です。ちょっと思い出せませんが、もし新キャラでしたらむさくるしい男ばかりの大隊に花を添えてくれそうな気がします(まさか男の娘じゃないよね?)。

しかし、この後におよんでも危険な任務から外れられるように色々手を打っておくターニャと、そううまくはいかない描写は細かいですが見ていて楽しいですね。

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