『幼女戦記』第18巻 帝国の勝利を前にターニャは絶体絶命のピンチをむかえる

東條チカ(著)『幼女戦記』第18巻 表紙 KADOKAWA 2020年4月発行
東條チカ(著)『幼女戦記』第18巻 表紙 KADOKAWA 2020年4月発行

『幼女戦記』のマンガ版第18巻が発売したので買ってきました。フランソワ共和国とのライン戦線での戦い、そして戦争に勝利するための【衝撃と畏怖作戦】がついに完成。決定的な打撃を与え、もはや帝国の勝利は揺るがないといった局面に現れたのは、これまでのターニャの戦績の中で最大の危機でした。

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東條チカ(著)『幼女戦記』 第18巻

18巻では第51~52話までを収録。わずか2話ですが、コミックスの厚みは従来通りです。前回は16巻のレビューとなりますが、以下を参考にしてください。

『幼女戦記』第16巻 前代未聞の人間ミサイル作戦を完遂せよ!
第2作戦【衝撃と畏怖作戦】開始。帝国の勝利のために、命懸けの人間ミサイル作戦にターニャと大隊メンバーが挑みます。

表紙はターニャとセレブリャコーフ(ビーシャ)の百合っぽいもの。今巻ではターニャが強敵を前に絶体絶命のピンチになるのですが、そこでこのビーシャが重要な役割を果たし、二人の信頼の絆が描かれます。

東條チカ(著)『幼女戦記』第18巻 表紙 KADOKAWA 2020年4月発行

裏面にはアルビオン連合王国最大の魔導士と呼ばれる、サー・ドレイク大佐。アニメ版にも登場しておりますが、いまいち存在感の薄かった彼。しかし、マンガ版では大暴れしてくれます。

東條チカ(著)『幼女戦記』第18巻 表紙 KADOKAWA 2020年4月発行

作者である東條チカ先生自ら18巻の宣伝動画も作られてます。見どころが簡潔に動画になっており、わかりやすいです。

また、Netflixではドレイク大佐の甥がマンガ版に先駆けて活躍する劇場版が配信中。劇場版らしい高クオリティの映像を楽しめるので、未見の方はぜひともご覧ください。

戦争芸術の完成

前回までは、フランソワ共和国の敵司令部を人間ミサイルで直接攻撃する【衝撃と畏怖作戦】の第一段階【ドアノッカー】作戦の成功により、フランソワの指揮系統をズタズタにしたターニャたち臨時混成第二〇三航空魔導大隊。今回は【ドアノッカー作戦】に続く、【衝撃と畏怖作戦】の第二段階【開錠作戦】が発動します。

フランソワの司令部を壊滅させた帝国軍は、間髪いれずにライン戦線地下に準備した大量の爆薬を点火。これにより限界ギリギリまで戦線を伸ばし切っていたフランソワの軍勢を、戦線ごと吹き飛ばしてしまいます。

引用:同書24-25ページより

塹壕陣地からライン戦線の地下までトンネルを掘り進め、そこに多数の爆薬を設置して爆破するという一見荒唐無稽な戦術ですが、現実に1917年の第一次世界大戦時にベルギーのメシヌ高地でこれと同じ戦術がとられ連合国軍はドイツ軍陣地を爆破・壊滅させました。この時の爆発は、人類が発生させた爆発の中で最大規模のもの(核兵器を除く)になったそうです。

幼女戦記では現実の戦術や史実が多数モチーフになっておりますが、この【開錠作戦】も同じでした。

とにかく、これによりフランソワは右翼陣地を喪失、そこから帝国軍の機甲部隊と機械化歩兵が進行して残るフランソワの左翼陣地の後ろに回り込み、前方と後方から残ったフランソワ軍挟撃を行うというのです。これが第三段階【回転ドア作戦】ということです。

フランソワは戦線を伸ばすためにほぼすべての予備戦力を投入しており、さらに司令部がすでに壊滅させられているため、進行する帝国軍に対抗することはまったくできません。勝利目前と信じて油断しきっていたのもあって、実際フランソワ軍は帝国軍になすすべなく蹂躙されていきます。

これにより対フランソワ戦争を終わらせる【衝撃と畏怖作戦】はすべて成功、ゼートゥーア少将のいう「戦争芸術」が完成することになりました。

引用:同書39ページより

包囲殲滅戦と会敵

【回転ドア作戦】により、再びライン戦線に進行する帝国軍。フランソワからしてみれば、弱っていたはずの帝国が急に息を吹き返したかのように攻撃を始めてきており、司令部に指示を仰ごうにもすでにターニャたちに壊滅させられているため、指示を受けることもできません。

混乱を極めるフランソワは当然撤退しますが、それを援護してくれる味方はすでに帝国軍により撃破されており、さらにそのまま回り込んだ帝国軍がフランソワ後方に現れたため、もはやフランソワに勝機は残っておりませんでした。この辺りの描写は、くり返し入る解説やイラストなどでとてもわかりやすかったです。さらに、随所に入る戦略的な解説も、素人には読み応えもありました。

引用:同書62ページより

フランソワを挟撃した帝国軍は、このまま包囲殲滅戦へと移行。あとは慎重にとどめを刺すのみとなります。

一方、ターニャたちもこの決戦に参戦すべく海を渡りますが、ここでアルビオン連合王国軍のドレイク大佐率いる二個大隊と会敵します。

引用:同書72ページより

アルビオンは(敗北寸前の)フランソワに助力するため、帝国軍の司令部を少数精鋭で叩く作戦を立案(さきほどフランソワの司令部を落としたターニャたちとほぼ同じ作戦)。アルビオンが誇る大魔導師サー・アイザック・ダスティン・ドレイク大佐を隊長にした魔導大隊を編成し、海を渡っていたのでした。

帝国軍の索敵によりドレイク大佐の部隊を見つけたターニャたち。しかし、先制しようとしたターニャたちよりも先に、ドレイク大佐たちが仕掛けてきます。

引用:同書97ページより

大規模術式による奇襲でしたが、からくも防いだターニャたち。しかし、ドレイク大佐たちは二個大隊なのに対し、ターニャたちは【ドアノッカー作戦】遂行のため中隊規模しかありません。彼我戦力差はあまりにも大きいですが、敵の狙いを帝国軍司令部と見抜いたターニャは、ここで応戦する決意をします。

アルビオン航空魔導大隊との死闘

戦力差が大きい圧倒的不利な状況で、またしても戦うことを余儀なくされるターニャたち二〇三魔導大隊。おまけにさきの【ドアノッカー作戦】のために装備を最小限にしていたため、頭数だけでなく物量でも不利な状況です。

これをカバーするだけの練度はある程度はありますが、やはり不利なのは変わらず。それでも迷っているうちに攻撃の手がなくなることだけは避けたいターニャは、即断即決で戦闘モードへ移行。物量を補うため接近戦へと持ち込みます。この時のアルビオンは接近戦を想定した装備ではなかったため、ターニャの思い切った決断は功を奏し、大隊の1つを蹂躙していきます。ターニャの判断能力の高さが、改めて示されましたね。

そして、想定していたよりもずっと強いターニャたちを前に、のちの作戦を考えて様子見していたドレイク大佐も急遽参戦。ターニャたちめがけて突撃してきます。

引用:同書120ページより

このドレイク大佐ですがアニメ版にも登場してはいるものの、そもそもアンソン・スー大佐が存在Xの力でラスボスになっていたためイマイチ印象にはのこっていませんでした。が、マンガ版ではアルビオン最大の魔術師というだけの力をいかんなく発揮し、ノイマンやケーニッヒなどターニャの部下でも腕利きの中隊長たちをことごとく撃破していきます。

圧倒的な力をみせるドレイク大佐

引用:同書128ページより

そして、味方がやられたことで激昂したヴァイスもやられかねない、というところでターニャが介入。一対一のタイマンでケリをつけることになります。

ターニャ対ドレイク

どちらもエース・オブ・エースであるターニャとドレイク大佐の戦闘は、遠距離・近距離を含めた激闘になります。

引用:同書136ページより

術式に腰があるのかわかりませんが、実力と経験を備えたまさに老獪な魔導士であるドレイク大佐は、ターニャにとってこれまでにない強敵となります。魔力量でいえばターニャもいい勝負ですが、やはり小柄な体格からの肉弾戦は不利であり、このドレイク大佐との戦闘でも、体があたるほどの近接戦闘では勝てない描写になっております。

引用:同書139ページより

この辺りの描写は、ターニャが何でもかんでも無敵というわけではないのがわかるので、戦闘シーンにも緊張感があって好きですね。

そして、ターニャがドレイクの腕を切り飛ばし、それにひるまないドレイクがターニャの宝珠・エレニウム九七式を砕き、首を握り潰そうとします。魔力の使えなくなったターニャには為す術がありません。

ターニャ対ドレイク大佐の死闘

引用:同書142-143ページより

これまでいくつかピンチの描写のあったターニャでしたが、ここまで絶体絶命なのは初めてではないでしょうか。このままドレイク大佐にやられるのでは、というところでセレブリャコーフ少尉がターニャごとドレイク大佐を撃ち抜きます。

引用:同書145ページより

これによりピンチを脱したターニャは、隠していたエレニウム九五式を発動させ、一挙に形勢を逆転させます。これまでの戦いは何だったのかとドレイク大佐が唖然とするほどの、圧倒的な魔力量でドレイク大佐を退け、さらに周りの敵まで広範囲に攻撃するターニャの術式。これにより戦況不利と悟ったドレイク大佐は撤退していきます。中隊長たちが撃破され、ターニャ自身もあわやというところまで追い込まれましたが、なんとか戦いに勝利しました。

戦争の集結?

海上でアルビオンを追い返したターニャたちでしたが、そのころライン戦線では【回転ドア作戦】が完全に成功し、フランソワ軍を包囲。掃討戦に移行しておりました。これにより帝国軍は、事実上フランソワ共和国に勝利。戦争は終わることになりました。

引用:同書168ページより

あいだにダキア公国やレガドニア協商連合との戦争もありましたが、発端だったフランソワとの戦争がようやく終結。周りをすべて敵に囲まれた非常に不利な戦争でしたが、無事ターニャたちは勝利することができました。

感想

ついに長きにわたるフランソワ共和国との戦争が(事実上)終了した帝国軍。まだ、このあともアニメで描写されているように戦いは続きますが、とりあえずマンガ版ではひと段落といった印象です。

18巻ではこれまでで最大規模の戦闘描写が多くあり、とくにドレイク大佐との戦闘では作者の画力の高さもあって、非常に読み応えがありました。アニメで見るドレイク大佐は、上でも書いたようにアンソン・スー大佐の補助的な役割だったのであまり印象にありませんでしたが、こちらではアルビオンの中でも大魔導士と呼ばれる実力を発揮、ターニャを追い詰めたところは見ていてハラハラしました。

それでもターニャを追い詰めはしたが落とせなかったわけで、いよいよ劇場版でも活躍した甥っ子が今後は出張ってきそうです。こちらも実力者ですから、いまから活躍が楽しみですね。

また、ターニャとセレブリャコーフとの絆の深さも改めて確認できました。ターニャはふだん部下をコマというか盾扱いしておりますが、やはりセレブリャコーフは特別なようです。

ターニャとセレブリャコーフの絆

引用:同書160ページより

この百合っぷりはじつに眼福。でも、一方でセレブリャコーフの水着姿を気になると言っていたりもするので、いったい今のターニャはどちらの性別なのかわからなくなりますね。見た目は女・中身は男のターニャですが、すでに長く女の身でいるため(以前も描写がありましたが)中身も女になりつつあるのは間違いありません。上の画像は百合とみるのかノーマルとみるのか、なんとも不思議な感覚です。

この18巻で、ようやくアニメで言うところの10話~11話前半までが終了。ここまでは帝国と基本的な方針が一致していたターニャでしたが、フランソワ共和国との敗戦処理をめぐってアニメでも軍部と対立するようになり、結局戦争は終わりません。果たしてマンガ版がどこまで続くかわかりませんが、戦闘描写だけでなく政治面の描写もとてもよくできたマンガですので、その辺りも楽しみにしております。