『幼女戦記』第20巻 第一部完結!しかし(存在Xとの)戦いはまだまだ終わらない!!

引用:東條チカ(著)『幼女戦記』第20巻 表紙 KADOKAWA 2020年12月発行より

存在Xの陰謀で年末に買えなかった『幼女戦記』第20巻をようやく購入してきました。『幼女戦記』もついに20巻の大台にのりましたが、この巻を持って第一部は完結。TVアニメシリーズの最終話と同じところまでということになりました。

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東條チカ(著)『幼女戦記』 第20巻

第57話~60話までを収録。ちなみに最後のタイトルは「勝利の使い方」ということで、TVアニメの最終話だった第12話と同じタイトルとなっております。

『幼女戦記』第18巻 帝国の勝利を前にターニャは絶体絶命のピンチをむかえる
マンガ版『幼女戦記』のコミックス第18巻をレビューします。今回はここ最近でもっともはげしい戦闘が描かれており、ついにフランソワ共和国との戦争に決着がつきます。

表紙はターニャを中心にヴィーシャ・ゼートゥーア・ルーデンドルフ・レルゲンの主要メンバー5人。

引用:東條チカ(著)『幼女戦記』第20巻 表紙 KADOKAWA 2020年12月発行より

裏面は第二〇三航空魔導大隊の面々となっております。

今回は帯がTVの提供画面風になっているのが笑えます。しかも、その提供があの憎き「存在X」になっていたり、ターニャが提供目になっているなど芸が細かいです。

引用:同上

でも、はしらにある「戦争はまだまだ続くよ!」の文字とフォントが何気に怖いですね。

帝都ベルンへ

フランソワ共和国の首都・パリースィイを陥落させ、長きにわたる戦争に勝利した帝国軍。しかし、ド・ルーゴ率いる共和国軍の残党がブレスト軍港から密かに出発。これを逃せば泥沼の世界大戦へと発展することを知っていたターニャは上層部を説き伏せようとするが失敗、さらに独断専行による強硬策を取ろうとするも、これも阻まれてしまいます。

今後の歴史を知るターニャからすればこれを逃せば最終的に帝国の破滅へとつながるとわかっていますから逃すわけにはいかなかったので、あまりの悔しさに初めて叫び狂います。しかし、ターニャはここで、もしかしたら独断専行を止められたのは上層部・とくにゼートゥーア少将あたりに何か腹案があるのではとわずかに期待しておりました。

引用:同書31ページより

が、いくら待っても何のアクションも起こさない上層部。それどころか中央参謀本部は戦争終結に向けた外交交渉すらせず、歴史的大勝利を祝おうといった内容の通信が届く始末です。この期に及んでターニャは直接中央参謀本部に出向いて、特にゼートゥーア少将に会って真意を問いただそうと決意することに。こうしてターニャはヴィーシャを連れて、帝都ベルンにある中央参謀本部に向かうのでした。

現実を知るターニャ

戦勝気分に沸く帝国軍。その中にあっても中央参謀本部、とくにゼートゥーア少将とルーデンドルフ少将だけは常に帝国の行く末を案じて今も策を弄しているだろうと信じていたターニャ。

ですが、到着したターニャを待っていたのは、まさかの二人とも不在。しかもビアホールに行ったようだという門兵の言葉でした。

引用:同書63ページより

これを聞いて、さすがのターニャも大いに動揺します。特にゼートゥーアには全幅の信頼をよせていた彼女ですから、まさか彼まで戦勝気分に浸っているとは思ってもいなかったのです。“急に知性が鈍化した”と言っていたターニャですが、参謀本部全体がそうなっていることに今更ながら気づいたのでした。

これについては全方面敵だらけという絶望的な状況下の中で泥沼の戦争状態が長かったこと、特に共和国は強敵でしたから、それらを打ち破り首都まで陥落させたのであれば戦勝気分になるのも仕方ないと言えるでしょう。ターニャの評価は軍内部でも非常に高いものですが、それでも一介の少佐であることに違いはありませんから、その彼女の言葉をこの状況で聞いてくれる人はほとんどいないでしょう。

落胆したターニャは早々に参謀本部をあとにし、向かったのは生まれ育った孤児院の教会。ここで彼女は施設の院長に懺悔を口にし、もう二度とここには来ないかもしれないと告げます。

そして出ていくターニャでしたが、ここで彼女は過去の自分自身(転生前のサラリーマンと転生後の軍人になる前?の二人)と出会うことに。現状を嘆く過去の自分を見るという不思議な光景ですが、本人はあまり気にしていないようですね。

引用:同書81ページより

過去の自分は破滅フラグしかない帝国に見切りをつけて合州国あたりに亡命すればよいと言いますが、ターニャはこれを拒否します。信頼できる部下を得て、昔のただただ合理的だったターニャとは明らかに変化しているようですね。過去の自分と現在の自分はハッキリと別人という認識になったということでしょうか。

レルゲンとの会話

孤児院を出たところで、ターニャは意外な人物に遭遇します。それはレルゲン中佐。彼はターニャの生まれ育った環境を一目見ようと孤児院に来たようです。

ターニャを自分の家に誘うレルゲンでしたが、車の中でターニャがことあるごとに“はい、レルゲン中佐どの”というのが何だか面白かったです。

レルゲン中佐とターニャの楽しい?会話

引用:同書91ページより

レルゲンと他愛のない話しをしながら、いつのまにか笑い出すターニャ。さっきまであれほど荒んでいたのに、とも思いましたが、レルゲンはこれまでも(勘違いばかりだが)ターニャが心を許して話しができるほぼ唯一の人物なのでこれも納得できるような気がします。上司と部下の関係ではありますが、同じ参謀職の二人ですから、いろいろな気苦労も共通認識として持っており話しやすい関係なのでしょう。

レルゲンの自宅に着き、一息ついたところで、レルゲンはターニャに何かあれば忌憚のない意見をと勧めます。ここでターニャはこれまで思ってきた中央参謀本部への不満を話しだします。

戦勝気分に沸き、しかるべき仕事をしていない軍上層部を怠慢と言い、犯罪的な無為無策と強い口調で非難するターニャ。これを聞いてレルゲンは、卓越した戦績を上げただろうが、それは驕りが過ぎるぞと釘を刺します。しかし、それでもターニャは非難をやめません。

そして、ターニャは人間とは合理性だけでは動かず、時として合理性よりも感情を優先する愚かな生き物であると言います。憎悪を囚われた人間は損得抜きにどこまでも抗うから性質が悪い、だからその憎悪の火はすべて打ち消さなけらばならないのだと言うのです。あきらかに共和国軍を意識した物言いですが、これまでもターニャはそうして相手を徹底的に叩いてきましたし、そうでなければ本当の意味での勝利などありえないと知っているのでしょう。

のちの歴史を知るターニャからすれば、厳しい言い方をしてでも危機感をレルゲンに伝えたかったのでしょう。

ゼートゥーアとの会話

こうしたやり取りにレルゲンが何と答えたのかは描かれておりませんが、これまでのターニャを知る彼が何かを感じたのは間違いないようで、翌日ゼートゥーア少将に面会を申し入れるため、ターニャとともに中央参謀本部へと出向きます。強い決意を胸に秘め、いよいよターニャはゼートゥーアに面会します。

引用:同書125ページより

秘書官らしき人物が、いかにターニャといえども専務参謀次長であるゼートゥーアに、直訴がごとき行動をとるのは看過できないとレルゲンを非難しますが、それでも強引に面会をねじ込むレルゲン。異例の面会申し入れだというのがわかりますが、ここまでしてもターニャをゼートゥーアに会わせようとするとは、いかにターニャを買っているかがわかります。

そして、ゼートゥーアとの面会。ゼートゥーアは最初、独断専行を詫びに来たのかと考えますが、すぐにそうではないだろうと察します。何か特別な進言があってここへやってきたことを感じるゼートゥーアはさすがですね。

しかし、軍隊である以上、ターニャが専務参謀の決定に口を出すのはやはりまずいようで、このままでは帝国は勝利を逃しますよ、とは言えません。一方のゼートゥーアも、ターニャが何か言いに来たのは察しても、それが何であるかはターニャ自身が進言するものとして聞くことはしません。あくまで、ターニャから切り出すのを待っています。

引用:同書134ページより

要は、ゼートゥーアはターニャが言い出すのを待つ、ターニャはゼートゥーアが聞いてくれるのを待つという、いつもの色々考えながらもすれ違うというシーンだと思うのですが、さすがにこの状況下では不自然に見えます。

ターニャはこのままいけば帝国が破滅に向かうと思ったからこそ独断専行してでもそれを阻止しようと思っており、また、現在の帝国がいかにかりそめの勝利に酔っているかもわかっているはずです。帝国と何よりも自分自身の未来が大きくかかっている状況下で、いくら軍隊の規律があってもここで進言しないのはおかしいように思えます。

また、ゼートゥーアにしても、戦場のみならず戦略面でも大いに実績があるターニャが独断専行してまで行おうとしていたことが、単に目前の戦果を逃すまいとしただけと考えるのはあまりに浅慮でしょう。可能性の一つとして考えるのは少しはわかりますが、だとすればいっそターニャに参謀本部に何か見落としがあるのかと聞いても、少なくともルーデンドルフよりはあり得るように思います。

なんとなく物語的にそうはできないために、無理やりな思考をしているように見えてしまい不自然に感じてしまいました。

とにかくお互いが真意を言い出すのを待つ状況でしたが、ゼートゥーアが言った(ターニャを思っての)言葉により、もはやこれ以上は無駄だとターニャは悟ってしまいます。せめて自分が中央参謀本部で発言力がもっとあれば、男であったならば、あと30年早く生まれていればと悔いるターニャ。

現状はこれらすべてに正反対の位置にいる自分、そして、そう仕向けたのはあの存在Xであり、ここで【幼女】の設定が最大限の効果を悪い方向で発揮することになったのです。どんなに活躍しても幼女設定がケチをつけるのですから、いくら出世して名声を得たとしてもターニャの前途は多難です。

世界大戦への戦いが幕を上げる

ゼートゥーアとの面会は失敗し、涙を流して本部を去るターニャ。一方そのころ、南方大陸のチュルス軍港にてフランソワ共和国軍の残党が、帝国軍に対して徹底抗戦を宣言。戦いはまだ終わっていないことを知らせるのでした。

引用:同書165ページより

自由フランソワ共和国軍と名前を変え、南方大陸の植民地に集結したフランソワの残党。そこにアルビオン連合王国やレガドニア協商連合の亡命者も集まっただけでなく、あの合州国も戦時体制へと移行し、世界中の軍隊が戦いの準備を始めます。

ターニャはこのことを言っていたのか、と今更知るレルゲンやゼートゥーアなどの面々。しかし、時すでに遅しということでこれからの戦いに備えることになります。もちろんターニャも大隊へと帰還。参謀本部からいつ命令がきても動けるよう準備をします。

戦勝気分から一転、これまで以上の戦いが始まる雰囲気を感じたヴァイス中尉は、ターニャにこれから何が始まるのでしょうかと尋ねます。それに対するターニャの解答は、これまで本人が何とか回避しようとしてきた呪いの言葉【世界大戦】でした。

引用:同書181ページより

帝国軍にとってはここから先の見えない泥沼の戦場が待っているわけですが、ちょうどそのころ、合州国へ亡命したあのメアリー・スーが軍に志願しているのでした。

引用:同書183ページより

アニメでは一足先に劇場版で大暴れしたあのメアリー・スーですが、ターニャ以上の神の加護を得た最強のライバルがついに参戦してくるということで、これは今後の展開が非常に楽しみです。

感想

といったところで20巻は終わり、第一部完となりました。

本編については、これまで散々苦労してきたターニャの努力も世界の大きな動き(というか存在Xの目論見)には勝てなかったということで、現時点では存在Xの勝利といったところでしょうか。もちろん、これからもターニャはそれに抗うでしょうから、この絶望的な状況からどう盛り返すのか、非常に楽しみです。

そういえば、今巻ですとレルゲンと会話しているターニャの描かれ方が可愛かったですね。椅子に座ったまま膝をかかえるターニャは、いかにも女の子といった感じで良かったです。男性の作家ですとあまりこういった描かれ方はしないでしょうし(特にターニャは普段から勇ましい性格なので)、東條チカ先生ならではといった印象です。

引用:同書113ページより

そして、ファンとしてはいつ第二部が始まるのか気になりますが、ありがたいことに第二部はすでに本誌で連載されており、そう遠くないうちにコミックスでも見れるかと思います。いまだアニメ二期の情報もありませんから、もしかしたらマンガも終わってしまうかと思っていましたが、無事に続いてくれるようでなによりです。

どこまで描かれるかわかりませんが、アニメの続報を待ちつつマンガの連載を楽しみにしたいと思っております。